恋愛モノというより、何か不思議な展開が面白かった、小説『グリフォンズ・ガーデン』(早瀬 耕)

 恋愛モノはあまり読まないのですが、それでも楽しめる作品でした。

東京の大学院で修士課程を終えたぼくは、就職のため、恋人の由美子とともに札幌の街を訪れた。勤務先の知能高額研究所は、グリフォンの石像が見守る深い森の中にあり、グリフォンズ・ガーデンと呼ばれていた。やがてぼくは、存在を公表されていないバイオ・コンピュータIDA-10の中に、ひとつの世界を構築するのだが・・・・・・1992年のデビュー作にして、『プラネタリウムの外側』の前日譚、大幅改稿のうえ26年ぶりに文庫化
(小説のあらすじより)

 小説「未必のマクベス」を読んで、作者の早瀬 耕氏を知りました。早瀬氏の他の作品はと探すと、この「グリフォンズ・ガーデン」があったので、早速読みました。

 冒頭にも書きましたが、私はあまり恋愛モノを読まないのですが、「未必のマクベス」の面白さに、作者の他の作品を読んでみたく、手にとって読んでみました。
 すると、恋愛モノの小説みたいですが結構楽しく読める内容で、恋愛モノが苦手な方でも読みやすいものでした。

 恋愛モノの入門編みたいな感じともあてはまるかもしれませんが、恋愛モノが苦手な方でも、この作品は何か他のことにも焦点が当てられ、そのモノゴトの追求と言うか、どこか淡々と展開されていくようなちょっと不思議な独特な雰囲気に魅了されました。

 主人公はコンピュータプログラムに関わる理系の男の子。恋人との会話も、どこかモノゴトを学術的に考えるような会話で、それが面白い。ただ、話の内容がプログラムだったり、理系的な視点で展開されているため、私のような理系が苦手な者からは少し難しいようなところもありますが、それでも分かりやすい内容になっていて、そこまで苦にならない文章の流れになっていました。
 その理系的なモノゴトの追求さに、作者の書く物語の中の独特な雰囲気がすごくいい感じで融合していて、物語に入り込み、正直、こんな理系的な面白さがあるのか、と感じることもあるぐらい。

 物語は、2つの世界が交互に展開されていきます。
 一つは現実世界の主人公の世界、もう一つはコンピュータプログラムでのカップルの世界。
 この2つの世界がまたどこか考えさせられるようで、難しくというわけではなく、物語としても何だか自分の人生についても、突きつけられているようではなく、何かちょっとした形で、考えさせられるようで。

 恋愛面は少し淡々とした形もありつつ、どこか甘酸っぱい感じを楽しめました。

 といいつつ、私はその恋愛面よりも、やはり、主人公が研究する内容の展開、そして、プログラムの中の世界の展開がどうなっていくのか、ということが楽しめた内容でした。

 「未必のマクベス」とは内容がガラっと変わる物語ですが、こちらも作者の独特な世界観でしょうか、楽しめる内容になっていると思います。
 ちなみに、小説「プラネタリウムの外側」の前の作品だということみたいです。