人生から社会的なことまで、人生を取り上げた内容。本『友情について 僕と豊島昭彦君の44年』(佐藤 優)

 人生について、人の人生についてから考えさせられました。

高校時代の親友が膵臓癌に。余命の中央値は291日。

「豊島、一緒に本を作ろう。
君の体験という財産を、
後の人たちのために遺すんだ」
会社の破綻、理不尽な上司、リストラや出世、転職、家族、友人、病・・・・・・
人生とは何か。
余命を意識したとき、
人は何を思うのか―――
前代未聞の緊急出版プロジェクトが始まった。
(本の帯より)

 本は、
・Ⅰ 友情
・Ⅱ 礎の時代
・Ⅲ 疾風怒濤
・Ⅳ 灯火
という構成になっています。

 佐藤優氏の友人の豊島昭彦氏の人生について書かれた内容です。
 豊島氏と佐藤氏が送ってきた人生やポイントも書かれており、時代背景から様々な困難などが書かれていました。

 人の人生、様々な人生があります。子供時代から学生、社会人と歩んでいった背景には、読む側にもちょっとした人生のヒントになりうることもあります。
 そうした人生を考える上でも、何気に面白かった一冊でした。

 興味深かった内容は、

・法律は条文だけで成り立っているものではなくて、その法律を使う人間の行動や思いによって成り立っているものであること。
 どうして原告と被告は争っているのか? その背景となる事実があり、それぞれの思いがあり、それを裁く尺度としての法律がある。そういう人間たちの行動や思いと結びつけて考える法律学こそが生きた法律学であり、法律とはなんと人間臭いものであるかということ。

・地政学の視点でいうと、島国の日本はネットワークを重視する海洋国家。そのためネットワークだけ持っていればいいという発想になるので、腰を据えて植民地を統治していくためのシステムを構築することが苦手になる。
 大日本帝国の時代、日本人は朝鮮半島に進出。半島国家は、地政学的に半分は海洋国家、半分は大陸国家だから、ハイブリッドな性格を帯びる。大陸国家の基本戦略は自国の領域を増やして、効率的に統治することだから、マネジメント能力がついてくる。旧満州や朝鮮半島にいた人たちが戦後、日本国家を再建する過程で重要な機能を果たしたのは、実はそういった事情があったからではないか、ということ。
 逆に今、日本が弱ってきてるのは、大陸的な形での経営とかマネジメントをやった世代が退場してしまったという要素があるのでは。この人たちが、直接教えられたのが世代も退場しつつある。しかし、その教えられた世代は、実際に植民地のような環境での経営とかマネジメントをやっていない。それだから、次世代への継承ができない。

・政治事件の場合、直接的な被害を及ぶのは、政治家や官僚とその家族、さらに秘書くらい。
 経済事件は数百人、数千人の生活に影響を与えることになる。特に銀行の場合、日本経済全体に与える打撃は計り知れないということ。