編集長職というだけではなく、人生や他仕事に言える内容が盛り込まれていた、本『「週刊文春 編集長の仕事術』(新谷 学)

 スクープを飛ばして話題になっている「週刊文春」。その編集長の仕事術が書かれていました。

人脈・企画・交渉・組織・決断・戦略など
現役編集長が裏側を全公開!

すごい結果を出す門外不出85の奥義
(本の帯より)」

 世間の話題になるほど、スクープを続けている週刊文春。その編集長が雑誌や記事にこめる思いが書かれていました。
 仕事の仕方や報道への考え方などが書かれており、仕事を進める上でのチームワークや部下への配慮なども書かれていました。

 興味深かった内容は、

・世の中で起こっている様々な出来事、あるいは話題の人々のことなどを「面白がる」気持ちがスキルやノウハウよりも大切。世の中の空気を肌で感じ、あらゆるモノゴトに敏感になることが全ての原点。

・どの世界でも何かを成し遂げた人には独特の雰囲気がある。編集者、記者にとって、そういう人の謦咳に接することはかけがえのない財産になり、会った人によって鍛えられる。

・雑誌には否が応にも作っている人間がにじみ出る。自身が雑誌作りを面白がらなければ、読者にその面白さは伝わらない。もっと言えば、人生そのものを面白がる精神が大切。

・すごい人たちは、社交辞令で終わらせない。「やりましょう」と言ったら、すぐ「じゃあ、いつやろうか?」と日程調整に入る。すごい人ほど、動きは速い。

・振り返ってみると、付き合いが長く続く相手に共通するのは、お互い立場は違うが、「何のために働くか」について共感できるという点。逆に、いかにも「仕事として関係を持っています」という他人行儀なタイプの人とは、付き合いが深まることはない。
 面白いのは、肩書が外れても人間同士の関係を維持するタイプの人の方が、その組織の中で圧倒的に出世しているということ。

・大切なのは、思いつきをそのままにしておかないということ。
 面白いと思ったらやってみることが次につながる。話題にならなかったら、また違うものを考えればいい。

・企画を考える上で大切なのは、常に「ベストの選択」をすること。「この人を落としたらすごいぞ」「このネタが形になったら世の中ひっくり返るぞ」と思ったら、そのベストの選択肢から絶対に逃げないこと。
 何ごとも「こうなったらどうしよう」と心配するよりも、まず「こうなったら面白いな」と考える。

・デスクの指示通りに動くだけではなく、「これは俺の現場だ」と自覚して、自分なりに「こういうやり方ならできるんじゃないか」「こうすればもっと面白くなるんじゃないか」と提案したり、アクションを起こす人。覚悟を持って、現場を背負える記者は、間違いなく伸びる。
 予断を持たず、当事者意識を持って現場に立たないと、いい仕事はできない。

・判断を下す時、大切にしている三要件「正当性」、「合理性」、「リアリズム」。
 本当にその判断が正しいのか。きちんと本質を突いているか。そして、理に適っているか。正当性と合理性、この二つで判断すれば、たいてい間違いはない。
 そうやって理詰めで正しく判断できたとしても、人間はやっぱり感情を持った生物で、白か黒かで割り切れない部分もあったり、情に流されたりする部分もある。その「きれいに割り切れない曖昧なところ」について判断する上で必要なのが、「リアリズム」。

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