内容は、相談事を回答していくという構成でした。
「仕事の迷いに
『ストーリーとしての競争戦略』
の著者が答えを示す!
(本より)」
興味深かった内容は、
・結果の良し悪しを左右するのは環境ではなく、その人が実際にどういう勉強をしたのか、個人としてどの程度受験勉強の能力があるのかにかかっているということ。
→良い環境に行くと半ば自動的に良い結果が得られる(悪い環境に行くともうそれで良くないことになる)と思い込んでしまう。そういう人ほど物事がうまくいかなくなった時に弱い。ことの成否を環境のせいにしがち。
・イヤになるというのは、どこかにひっかかりがあるから。自分の興味関心の奥底に触れる何かがあるから、読んでいて面白い。
→イヤな気分になるということは、どこかで自分に深く関わっている。全く何も関心がなく、自分と考え方が違うだけなら、イヤになる以前に、ただの「つまらないもの」としてスルーされる。
・要するに「攻撃してくるのは暇な連中」。
→自分にやるべき仕事があってそれに没頭している人は、人のことをいちいち気にして言ってこない。責めてくるのはその人に対してやることがなく、暇だから。
・「自分にとっての幸せとは何か」ということを何よりも先に考える。
→幸せになるためには、こんな仕事や生活がしたくて、こんな仕事をするには、こういう大学がいいのではないか。この真っ当な順番で物事を考えられるように、「自分の幸せとは何か」を自分の頭で考える機会を与える。
・自分の頭で考えさせ、それを自分の言葉で言わせることが大切。
・「いい仕事をする」とはどういうことか。
→自分以外の誰かの役に立ったということ。大きな仕事を成し遂げたということは、すなわち自分以外の誰かに対して、大きな価値をつくったということ。
欲と夢との違いは、趣味と仕事の違いに重ねて考えると分かりやすい。趣味と仕事は違いは、趣味は自分に向けてやることで、趣味の場合、自分が楽しければそれでいい。自分のためにやる以上、自分でお金を払ってやる。趣味というのはそういうもの。
プロは逆です。そこには自分以外に受益者がいる。その人が何らかの価値を感じて、仕事の対価としてお金を払ってくれる。これがプロの仕事です。仕事は他人のためにやるもの、自分以外のためにやるもの。
・何もやりたいことが思いつかない時や、物事がうまくいかない時、うどん食って布団かぶって寝られるか、次の日起きて普通に淡々とやっていけるかどうかが、わりと大切な人間の資質。
・ワークとライフは横に並ぶ関係にない。
→「ワーク・アズ・ア・パート・オブ・ライフ」というのが本当のところ。ワークはライフを構成する(重要な)一つの要素にすぎない。
・仕事での成長は時間がかかるもの。
→自分に足りないところを意識しつつも、粛々と仕事に取り組めばいい。
・インスタントに解決できない問題は、焦らずじっくり取り組むことです。
→「前回より少しだけだが、確実に良くなっている」という程度の変化が一番いい。それを重ねていくことで、いつかブレイクします。「ブレイク」といっても、ある時にあなたが突然伸びる、ということではない。ある時に、周囲の人が積もり積もった変化の大きさに気づく。これが周りから見ると「あの人はブレイクしたね」ということになる。
・ゼロと一ではまるで違う。
→ゼロというのはまだ仕事をしたことがない状態。でも一度でも仕事をすると、ゼロが一になる。仕事を変えてみると、一が二になります。ゼロと一の違いは大きいが、一と二の違いもわりと大きい。一つの会社や職種の経験しかない人に比べて、自分の仕事をより相対的にとらえられる。その結果、自分の得意不得意が見えてきたり、新しいモチベーションを得て仕事に対して前向きになったりする。
・時間軸で思考を欠く領するためには、過去にさかのぼる、すなわち歴史を知る、これが古今東西の正攻法となる。
→歴史を知れば、自然と物事を長い目で見られるようになる。歴史を知るほど、未来を見る目も磨かれる。若さの弱点は、思考の時間が短くなってしまうことにある。自分の中に歴史がない。どうしても近視眼的になる。若い時ほど今この瞬間での良し悪しや満足・不満足で頭がいっぱいになってしまう。焦ったり空回りしたりしてしまいがち。若さの一つの本質は、自分の中にある時間的な奥行きがあまりないということ。
自分が興味関心を持っていたり、好きだったりする人物の自伝や評伝をじっくり読んでみること。自分の中に歴史はなくれも、疑似体験を通じて、自分の思考の中に歴史を取り込むことができる。視野を時間的に拡張する訓練になる。
・大事なのは、結局その人がどういう仕事をして、どういう成果を出したか。
→手段は価値中立的なもの。良し悪しは目的との兼ね合いでしか評価できない。
・一般的にいって「部下のできがいいとマネジメントが無能になる」傾向がある。
→老舗の一流企業では、放っておいても優れた人が集まりやすい。だから、マネジメントに必要性というか切迫感が希薄になる。
・放っておいても何とかしてくれる優秀な人材が集まる組織ほど、上に立つ人のマネジメント力が育たないという成り行き。
→「うちの会社にはロクなやつがいない」という前提で動いている組織では、嫌でもマネジメントが発達する。
・デザインというのはカッコいい作品をつくることではない。デザインとは社会的な問題解決に他ならない、という。
→つまり、空の高いところに手を伸ばしてつかみ取るようなものではなく、みんなが見過ごしている、道端に落ちている何かを拾い取る、そこにデザインの役割があるという。
・プロとアマチュアの違いは持続性なり頻度にある。
→調子がいい時も悪い時も、状況がフォローでもアゲインストでも、一定のレベルの仕事を維持できるかどうか。ここにプロとアマの決定的な差異がある。
長く続けることの意味合いにはいろいろとあるが、その最大のものはフィードバックを受ける回数や量が多いということ。仕事である以上、必ず受け手がいる。受けてはあなたの仕事に対して、必ず何らかの評価をする。
・スキルと言うのは「マイナスをゼロのレベルまでもっていく」ためのもの。
→仕事をするのであれば、みんなが持っていて当然のもの、それがスキル。プロの世界では、それは極論すればゼロ、何もないのと同じ。その先のゼロからプラスを創るのは何か。「この人に頼もうかな」とか、「こいつはいいな」と思わせるのは何か。それはその人に固有のセンスとしか言いようがないもの。「フォーム」といってもよい。プロにとってはこのフォームこそが己の仕事のよりどころ。
どんな分野でも、その道のプロが一番大切に懐に抱えているのは、誰もが使えるスキルやツールではなく、フォーム。このフォームばかりは「蛇の道は蛇」の最たるもので、長いこと時間をかけないと練り上げられない。フォームは千差万別ですから、人のを借りるわけにはいかない。借り物のフォームはいつか必ず破綻する。蛇の道は長いこと這いずりまわっているうちに、「こういうのが自分のフォームだな……」ということが見えてくる。それを後世大事に育てていくのがプロというもの。
・自分が面白くて重要でどうしても人に伝えたい、分かってもらいたいということを書く(話す)ということ。
→もっと言うと、自分でそう思えることしか書かないということ。どう書くかより、何を書くかの方が断然重要。大事なのは、「文章構成、抑揚、リズム」などのテクニックではない。HowはWhatについてくるもの。どうやったらうまく書けるのか、どういうしゃべり方がいいのかを考えるのは、二の次三の次。自分が面白いと思っていることであれば、自然と文章にリズムが出てくる。人にどうしても伝えたいことであれば、自然とうまい文章構成になるもの。
・問題は文章技術ではない。それだけの量のどうしても伝えたいことが自分の中にあるかどうかが問題。
→「どうしても分かってもらいたいことをつくり出す力」、これが世に言う「文章力」の正体。もし自分の中にどうしても伝えたいことがなければどうするか。その時は、「黙っている」。
良い文章を書く要諦は実に簡単。自分で面白い、どうしても伝えたいと思うこと以外は書かない、ということ。話し言葉でも同じ。
(5/10)