気軽にスリルやユーモアが楽しめる作品に、最後の最後までその行方が気にならせるように楽しめた、小説『陽気なギャングは三つ数えろ』(伊坂 幸太郎)

 伊坂氏が仕掛ける4人の強盗を通しての独特な不思議な世界が楽しめました。

陽気なギャング一味の天才スリ久遠は、ひょんなことからハイエナ記者火尻を暴漢から救うが、その正体に気づかれてしまう。直後から、ギャングたちの身辺で、当たり屋、痴漢冤罪などのトラブルが頻発。蛇蝎のごとき強敵の不気味な連続攻撃で、人間嘘発見器成瀬ら面々は追いつめられた! 必死に火尻の急所を探る四人組だが、やがて絶体絶命のカウントダウンが!
(小説のあらすじより)

 4人の強盗団に、すごい厄介な人物が立ちふさがりました。

 ウソを見破る成瀬。話の達人、響野。スリ名人の久遠。正確な時間がわかる雪子。それぞれに特殊能力があり、さらに成瀬は寡黙で計画をたてる才能があり、何事にもポジティブな響野、人よりも動物を愛する久遠。一時の母でドライヴィングテクニック抜群な雪子という、性格などもあわさって、物語を楽しめます。

 今作も相変わらず飽きさせない物語展開で、ユーモアを楽しみながら手軽にも楽しめました。

 ただ、今作に登場する主人公たちとやり取りする登場人物は、一つはどこか不思議な人、そして、もう一つはすごく嫌な存在な人物でした。
 カジノを運営する人物はその前者で、ちょっとその人物がどういう人なのか、どうしてそのようなことをしているのか、と感じさせられました。ただ、後者の嫌な存在の人物は、主人公たちの前に立ちはだかる問題の人物で、その人物をどうやって解決させるのか、がこの物語のキーポイントになりました。

 そして、相変わらず、今作もその解決の行方が最後の最後、面白かった。
 最後の最後の展開のちょっとした工夫もあとあと、読んだ後に、というか今これを書いている最中に、気が付きました。
 読んだ後も楽しめるようになっているのかもしれません(笑)。