「熱い想い」がノート上にも飛び交うのが伝わってくる、本『野球ノートに書いた甲子園』(高校野球ドットコム編集部)

 高校野球の聖地「甲子園」では様々な感動が生まれる。負けたら終わりの甲子園大会で高校生たちの一生懸命なプレーが感動を生み出す。その一生懸命なプレーの背景には、様々な厳しい練習や試行錯誤がある。
 その試行錯誤の厳しい練習で、「野球ノート」というものを活用している高校がある。その「野球ノート」は、練習や試合といった野球だけではなく、人間関係や社会との関係などにまでつながる内容で、「野球ノート」を取り入れていたりする。

 「熱い想い」がぶつかり、感動を生むプレーには、厳しい練習や考えて行動してきた背景があるから、試合でそうしたプレーとなってあらわれる。
 そうした「熱い想い」が「野球ノート」にもあらわれ、その「熱い想い」が紹介されていた。

 この「野球ノート」は野球だけに限らず、普通の生活や人生、そして、手帳術といったことにも応用できる点も多かった。

 本書には、
・高川学園高校「野球ノートに書いた甲子園」
・小山台高校「日本一、心をもった日誌」
・弥栄高校「成功するノート」
・千葉経済大学附属高校「足りないものを帽子に秘めて」(コラム)
・日本大学鶴ヶ丘高校「笑鶴」(コラム)
・日本文理高校「自分だけの「野球の教科書」」
・春江工業高校「失敗ノート」
と計7校が取り上げられている。

 興味深かった内容は、

・日誌をつけることがメンタルトレーニングにもなること。

・日誌を書くためには、自分と真剣に向き合い、自分と闘わなくてはいけないこと。

・「試合に勝った」という一言を書くのではなく、どうして勝ったのか、悪かったところ、良かったところ、そして、その中に「どういう気持ち」があったのかを書くことが大切。

・毎回の練習では、集中力が重要。つまり、「質」で喰らいついていくこと。「継続できる努力」の継続という言葉を意識することが重要。

・環境が選手やチームを作るのではなく、心を育てることで、チームは強くなること。チームを強くしようという思いが、個々のレベルアップへの近道となること。

・ノートの表紙には、「最終目標」、「心の支え」、「ライバル」の3項目を書く。重要なのは、その言葉をイメージできる写真と物語をつけること。
 →言葉だけでなく、そこに写真や物語をつけることで、より自分がイメージしやすく、ノートを書く時の感情を盛り上げることができるから。

・ノートを書き続けるうちに、自分自身の変化に気づく。
 →3年生になってから、1、2年生に書いたノートを見返すと、そこには、似たような反省がいつも書かれており、ある時それができるようになっていた。知らず知らずのうちに、考えて野球をするようになって、プレーの自己分析もできるようになっていた。
 また、ノートを書き溜めていくと、自分がスランプに陥った時に、良かった日のノートを見て、こういう日が良かったっていうのも分かり、悪い日のノートを見れば何が悪かったのかも分かった。もうダメだと思った日も、調子が良かった日のページを見て、「よし! また頑張ろう」って、過去の自分に励まされた時もあった。それって、書き続けてきたからこそ分かるもので、それが自信になっていく。書き続けることの強みになる。

・「長距離走で1周目は疲れなかったが、2周目は疲れた」。そこから「なぜ、疲れたのか」を考える。そこで、必ずタイムを書くようになり、タイム以外にも数字を必ず書くことで、いろんな発見があった。もし、1周目よりもペースが落ちていれば、次はそれをどうしたら、ペースが落ちずに走れるのか。ダッシュの7本目を緩めてしまったけど、どうしたら次は改善できるのか。そうやって、数字を盛り込むことで、練習中の意識が変わっていった。

・中学時代からの夢、高校の教員となって野球部の監督になるために、何をすればいいのか? 常に成功に続くプロセスを逆算しながら、過ごしているという。

・野球ノート。自分だけの野球の教科書。
 野球には、ルールブックはあるが、教科書はない。選手は一人ひとり、体の特徴や技術、メンタルも違うわけなので、プレースタイルも変わってくる。ということは、全員にとって正解だといえるような投げ方や打ち方というものは存在しない。でも、自分のこれまでの投げ方やスイングを綴っておけば、それは自分にとっての野球の教科書になる。

・結局、メモ帳やノートを書いたとしても、自分自身が書いたことをきちんと理解して、行動に移すことができなければ意味がない。だから、高校時代の野球ノートっていうのは、直すものというより、頭や体に刷り込むためのツールという感覚で使っている。
 メモであれノートであれつけることが目的ではなく、あくまでグラウンドで自分のパフォーマンスを上げるためのもの。

・ポジションを転向することについて、初めてのポジションで一からスタートすることで、自分の中にあったものが全て崩されたというか、リセットされた。そのことが逆にチームを足元から見直せるきっかけになった。

・いい時も悪い時も記録として残る。記憶ってどうしてもいい時か、極端に悪い時の記憶しか残らない。だから、こういうノートをたまに見るといいヒントがある。だから、「自分だけの野球の教科書」になる。