歩を通じて人生について考えさせられようで、物語に読み入らせられた、小説『サラバ!(上・中・下)』(西 加奈子)

 テレビ「アメトーク」の読書大好き芸人で知った小説で、歩とその家族を通じた人生から自分の人生を考えさせられるようで面白かった!

 僕はこの世界に左足から登場した――。
 圷歩は、父の海外赴任先であるイランの病院で生を受けた。その後、父母、そして問題児の姉とともに、イラン革命のために帰国を余儀なくされた歩は、大阪での新生活を始める。幼稚園、小学校で周囲にすぐに溶け込めた歩と違って姉は「ご神木」と呼ばれ、孤立を深めていった。
 そんな折り、父の新たな赴任先がエジプトに決まる。メイド付きの豪華なマンション住まい。初めてのピラミッド。日本人学校に通うことになった歩は、ある日、ヤコブというエジプト人の少年と出会うことになる。
(小説(上)のあらすじより)」

 両親の離婚、そして帰国。母の実家のそばに住む母子三人は、次第にバラバラになっていった。母は頻繁に恋人をつくり、サッカーに興じる歩は高校で同級生の須玖を受けていく。姉は、近所に住む矢田のおばちゃんが宗教団体の教祖のように祀り上げられていくなか、そこに出入りするようになった。
 そして、阪神神戸大震災が起こった。それは歩の生活にも暗い影を落とし、逃げるように東京へ向かう。脳が蕩けるような学生生活を経て、歩はライターになった。だが、その先で、ある取材を依頼される。そこには変わり果てた姉が絡んでいた。
(小説(中)のあらすじより)」

 姉・貴子は、矢田のおばちゃんの遺言を受け取り、海外放浪の旅に出る。一方、公私ともに順風満帆だった歩は、三十歳を過ぎ、あることを機に屈託を抱えていく。
 そんな時、ある芸人の取材で、思わぬ人物と再会する。懐かしい人物との旧友を温めた歩は、彼の来し方を聞いた。
 ある日放浪を続ける姉から一通のメールが届く。ついに帰国するという。しかもビッグニュースを伴って。歩と母の前に現れた姉は美しかった。反対に、歩にはよくないことが起こり続ける。大きなダメージを受けた歩だったが、衝動に駆られ、ある行動を起こすことになる。
(小説(下)のあらすじより)」

 この小説は、人生にもつながるヒントが盛り込められているようで、読み入らせられた。

 物語は、外国で生まれた主人公・歩。歩はその家族との関係に悩みながら、外国や日本での生活を送っていく。序盤は、トラブルを起こす姉に巻き込まれまいとする歩。その姉の存在について展開されている。
 そんな歩は、それぞれの場面で、様々な人と出会い、様々な経験をしていく。姉が与える影響により歩の行動が決まってしまうような展開で、その姉についての物語展開。そこから、家族の関係なども描かれている。そんな中、出会う友人たちとの関係。歩にとっての友人の影響は大切な要素になっている。
 日本と外国での生活から友人たちとの一コマが歩に大きな影響を与えると同時に、家族、姉の存在も大きな影響を与え、社会人になった歩と姉や家族の関係も読み入らせられた。

 最後まで姉や家族の関係は、歩に大きく影響し、それらを通じて歩自身も人生に悩み続ける。しかし、そんな時に出会う友人たちがまた歩に与える影響がまた見所の一つ。
 最終的に、姉が見つけ出した答えと、歩が味わう経験が、物語を通じていい感じで、読んでいる側にも深いメッセージとなって考えさせられる。

 読んでいて、歩を通じて、人生を考えさせられるようだ。環境や条件が違っていても、人生の根本のようなものを感じさせてくれ、それが歩に関係している人々の関係からも感じることができる。

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