潜入する女医の視点がすごく読み入る、小説『ブラック・ウィドウ(上・下)』(ダニエル・シルヴァ)

 ガブリエル・シリーズ、今作でもガブリエルの雰囲気が楽しめた。

パリで大規模な爆弾テロが発生。監視カメラは瀕死の人々を冷酷に撃ち殺す女の姿をとらえていた。実行犯は黒衣の未亡人と呼ばれるフランス出身の女――西側に殺されたISIS戦闘員の恋人だった。さらにアムステルダムでも凄惨なテロが起き、この連続爆破事件で友人を失ったイスラエル諜報局のガブリエルはフランス当局と極秘に捜査を開始。やがて姿なき黒幕サラディンの存在が判明し……。
(小説『ブラック・ウィドウ(上)』のあらすじより」

連続爆弾テロ事件の首謀者、ISISのサラディンに迫るため、ガブリエルは大胆不敵な策に打って出た。若きフランス系ユダヤ人の女医を“黒衣の未亡人”に仕立てラッカに潜入させたのだ。それまでの人生を消し去り、復讐に燃えるパレスチナ人となった女は、暗黒の地で斬首より恐ろしい選択を迫られる……。世界の諜報機関をも巻きこむ危険なミッションの先には、未曾有の惨劇が待ち受けていた――!
(小説『ブラック・ウィドウ(上)』のあらすじより」」

 前作からすぐの展開で、今回もガブリエルに起こる絶え間ない試練の連続に驚かされた。本当に一つクリアしたら、すぐにって感じで、ガブリエルの休む暇もない状況(笑)。

 物語はあらすじからも分かるだろうが、パリで深刻なテロが発生し、そのテロの背後の存在を探り出すという物語。
 今作も主人公・ガブリエルが大活躍し、ガブリエルの独特な雰囲気を楽しませてくれる。それに加え、登場人物も魅力的で、フランス当局の刑事にも注目できる。

 物語は、全体的にテンポが良く、ところどころでちょっとした細かい描写があり、物語に読み入らせてくれる。
 そして、物語の要素となる登場人物とモノゴトが展開されていく筋道がいい感じで、物語を楽しめる。

 そして、若きフランス系ユダヤ人の女医という、重要なポジションの登場人物の存在がまた魅力的。ガブリエルがこの女医を、スパイとして潜入させるまでの物語、そして、潜入後の物語が、この女医の視点が描かれており、それがまたすごく迫力があった。

 ガブリエルが見所の作品だが、この作品は女医の視点も見所で、その苦闘が伝わってきて、物語に入り込む要素になっている。女医の待ち受ける環境の視点が読者に、その苦闘を感じさせるものは迫力があり、物語がどう進んでいくか、その不安を感じさせ、物語に入り込ませられた。