わかっているようでそうでないことだった、『情報を捨てるセンス 選ぶ技術』(ノリーナ・ハーツ)

 シンプルなことで「わかっているんだよ~」ってなる場面もありましたが、なかなかできないことの重要さが盛り込まれていました。

人が1日に下す決断の数―――約1万件。
2008年に消費した情報量―――1960年の3倍。
2020年の情報量―――今日の44倍になる見込み。
新聞のトリック、テレビの嘘、ウェブのなりすまし。
真実を見抜き、最良の意思決定を。

情報の海の中で、誰を信じる? 何が本当?
イギリス気鋭の経済学者が
豊富なエビデンスをもとに語る話題作!

 自己啓発の活気さを求めて読んでみると、「ちょっとそこまで・・・・・・」っていった感じがありました。

 現在は情報が溢れるほどで、それらを「どう利用・活用していくか」ということが大きな課題になっています。その「どう利用・活用していくか」ということを考える内容。ただし、その情報を「どう分析するか」についての基本みたいな感じも多かったです
 結構、その基本的な内容が「わかっているよ~」っていう内容から「わかっているけどやれていない」という内容まであり、痛い指摘を受けているような感じ。だけど、その基本的なことはすごく重要な内容なことなので、疎かにすれば痛い目にあうということばかり。

 基本的なことが盛り込まれていますが、その応用や背景なども取り上げており、その重要さがわかる内容にもなっていました。
 すぐに応用して利用できる内容や、これは「ちょっとなかなか取り入れるのに難渋しそうだな」っていう内容もあり、これをどこまでうまく活用するかは、本を読んでじっくり考える必要がありそうです。もちろん、ヒントは結構ありました。

 興味深かった内容は、

・ある国の状態を知る究極の指標として経済成長に注目しがちになるが、成長指標はその成長が「どうやって成されてきたか」を何も語っていないということ。

・「経済成長」という指標は、それによって得られた利益が「どう分配されたか」について、何も語っていないということ。
→例えば、利益が均等に分配されているのか、男女間に差はないのか。実際のところ、「経済成長」という指標から、その国の現在あるいは未来の暮らし向きについて得られる情報は比較的少ないのが現状であるということ。

・私達はもっと鋭い観察眼を意識的に養うべきだということ。
→例えば、レーズンを頭に浮かべ、それを両手でこすってみる。どんな感じがする? それをよく眺めて、輪郭を吟味。次は匂いをかいでみて。さらに舐めてみよう――舌の感触はどうだろう? こうした念(マインドフルネス)のテクニックを練習すると、見落としてしまいがちなものに大きく見開いた目を向けられるようになる。

・自分の先入観に質問を投げかけるような情報を積極的に探してみることも必要なこと。
→新たな状況が生まれれば、それを独立したものと捉え、新たな情報が得られれば、それは形勢を一変する可能性があるものと捉えなければいけない。何かを評価する時には、それが自分の考えているようなものかどうかだけでなく、「おそらくこういうものであろう」と考えられるものとは別の何かではないかと問いかけてみること。

・親しみがあるものやわかりやすいもの、自分が聞きたいと思っていることに近いものには注目しやすいという事実を意識しておくこと。
知りたくないことには注意が向けられにくいという事実、過去にとらわれてしまうことがあるという事実、それによって現在の出来事を処理したり、未来を想像したりする能力が失われてしまうという事実を意識することが大切。

・自分にもっと時間を与えてあげること。
→何かを自分に問いかける時間や他の選択肢を検討する時間、あなたの目が全体を見渡すための時間。

・判断することが先のことであればあるほど、つまり結果が出るのが先になればなるほど、過去は道しるべとして機能しなくなるということ。
→可能性の基本則――だから、決断から結果までの時間ができるだけ短くなるように、一日のできるだけ遅い時間に決断ができるなら、それにこしたことはない。

・決断には柔軟性をもたせるのがベストなこと。
→極力、プランAに固執しないこと。現代のように変化のスピードが速い社会では、理想的には常にプランB、C、Dをポケットに忍ばせておくこと。

・できるだけ最高の情報を活用するには、評価を継続的に行うことが必要だと頭に入れておくこと。
→ものごとがかつてどうであったかだけではなく、現在や未来にも目を配るということ。「今何が変わってる?」、「明日は何を変えられる?」と積極的に自問。そして、現時点で下している決断や目下探している情報に対するこれらのつながりをじっくり考えること。

・最初に与えられた数字や情報が船の錨のごとく基準になり、それにとらわれてしまう「アンカリング効果」を意識すること。

・研究によると、単に「もし……だったら」と自分に問いかけてみるだけで、別の解釈や違ったとらえ方ができるようになり、判断に影響を及ぼしかねない枠組みや暗示、アンカリング効果、レトリックから距離を置くことができるということ。

・気持ちが傾いているものとは反対の選択肢を考えてみること。

・最終結論を出す前に本来の意思決定環境から離れてみること。

・その情報を伝えているのは、本当のところ誰なのかを考えてみること。

・専門家にも欠点はあり、偏見もあるということ。

・自分でできることは何でも自分でやって、自分自身が専門家になること。
→非常に重要な決断をする場合は、まず自分の知識ベースを築き、自分で考え、適切な質問とはどういうものか、どういった類の回答をもらえばいいのかを知るための準備をしておくこと。あなたが選んだ専門家が教えてくれること、勧めてくれること、助言してくれることをしっかりと理解しなければいけない。理解できれば、相手の指示がきちんと検討できる。

・非常に頭が切れて思慮深い人は、常に他人から学ぼうとする姿勢を忘れないということ。
→ものごとに対する自身の見解や考え方を持っているが、どんなものにも常に心を開いている。

・それを否定しようとする人よりも、これを認める専門家の方が優れているということ。
→政治の動向をぴたりと予想する人は非常に謙虚であることを、数々の研究が示している。

・私達が検索しているものが、後に起こることを前兆となっている可能性があるが、グーグルトレンドがとりわけ有効なのは、人々の懸念や関心が生まれていることを極めて早く見つけ出す点だということ。

・こうしたツールによってもたらされたチャンスを意思決定に最大限役立てるには、これまで同様、脳のスイッチをしっかりオンにして、新たに受け取ったいかなる情報にもきちんと疑問を抱くことが必要だということ。

・あなたは情報サイトを見る際に、非常に大ざっぱであっても、何かしらのスクリーニング作業を行っているだろうか?

・一種のムードマネジメントシステム。ネガティブな気分でスタートし、それについてネガティブに考えるように言われた人たちは、無意識のうちに徐々にポジティブに振るまい始めるということ。また、その逆も。
→楽しげな人たちが急に沈み込むということではない――自分の感情に気づくことで中庸へ向かい、賢明な判断ができる感情の均衡状態(安定した状態)へとたどり着く。

・もし24時間全く睡眠を取らなかったり、一晩に4~5時間程度の睡眠で1週間を過ごしたりしたなら、血中アルコールレベルが0.1%の状態と同じような精神障害を起こしているということ。

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