筆者の読書の考え方だけではなく、人生の考え方も盛り込まれていた、新書『死ぬほど読書』(丹羽 宇一郎)

 丹羽氏(筆者)の読書の考え方や仕方の方法、人生の考え方が書かれていました。

もし、あなたがよりよく生きたいと望むなら、「世の中には知らないことが無数にある」と自覚することだ。すると知的好奇心が芽生え、人生は俄然、面白くなる。自分の無知に気づくには、本がうってつけだ。ただし、読み方にはコツがある。「これは重要だ」と思った箇所は、線を引くなり付箋を貼るなりして、最後にノートに書き写す。ここまで実践して、はじめて本が自分の血肉となる。伊藤忠商事前会長、元中国大使でビジネス界きっての読書家が、本の選び方、読み方、活かし方、楽しみ方を縦横無尽に語り尽くす。
(本より)

 丹羽氏の読書の方法、考え方が書かれていました。

 構成は、
・はじめに
・第1章:本に代わるものはない
・第2章:どんな本を読めばいいのか
・第3章:頭を使う読書の効用
・第4章:本を読まない日はない
・第5章:読書の真価は生き方に表れる
・第6章:本の底力
・おわりに
という本の構成になっています。

 読書をする方法が書かれていて、方法・技術だけではなく考え方、思いなどが展開されていました。その読書を通じた、人生についての考え方も紹介されており、読書をどう人生に活かしていくかというヒントも盛り込まれていました。

 読書については、
・「どういう内容なのか」、「どういう構成で展開しようとしているのか」は、目次から分かるということ。
・読書は、即効性がなく、自分なりの答えを考えて探すというところに、読書本来の醍醐味があるということ。
・オリジナルの本を読むには時間も手間もかかるが、エネルギーを使った分だけ、確実にそれらが血肉になるということ。つまり、コストをかけた分、自分の思考や言葉にすることができるということ。
・思考力を養うには、何も哲学書のような堅い本を読む必要はなく、小説でも経済書でもいいということ。なぜこの主人公はこういう行動を取ったのか? 書き手が主張する論は正しいのか? などといろいろなことを考えながら読むことができる。つまり、本を「なぜ?」「どうして?」と考えながら読めば、それだけ考える力が磨かれるということ。
・読書をする時に大切なことは、丁寧に読むというより、いかに集中するかということ。
・理性ばかりを働かせていたらバランスが崩れるので、感情も動かす必要があるということ。
・本に書いてある他人の失敗事例をいったものは、防止の手立てとしてあまり参考にはならないと思っておいた方がいい。結局、自分の失敗をテーマに書いた本は、「こうして自分は甦った」という筆者の自慢話。
・あまり期待していたほどではない内容だったとしても、一つでも、二つでも心に刻まれる言葉があれば、儲けものと思った方がいいということ。特に人間への洞察や行き方に影響を与える言葉というものは、それを記憶しても、すぐに生かせるものではない。仕事や人との付き合いの中で体験したことが、記憶にある言葉と結びつき、初めて「こういうことなのか」と府に落ちることもある。それまでは単なる知識に過ぎなかった言葉はそこで知恵に変わり、心のシワになる。その反対に、体験していたことで言葉になっていなかったものが、本で出会った言葉でそういうことだったのか、と形を与えられることもある。すなわち、本で出会う言葉と体験は互いにキャッチボールをしながら、その人の人生をつくっていくのでは。つまり本を読み、心に刻まれた内容は、必ず生き方に表れる。そうなるためには、心に響く言葉は反芻してじっくり味わい、様々な体験について、それを洞察する視線を常に持っていないといけない。心にシワが多い人は、人と向き合った時、相手の心のシワがどのくらいあるのかが分かる。反対にシワが少ない人は、たとえ相手がたくさんのシワを持っていても、それを感じることができない。
などといった読書に関する考え方を紹介していました。

 読書方法以外にも丹羽氏の人生論もありました。
・一次情報を一刻も早く得ることがとても重要で、少なくとも新聞記事になっている段階で、手あかのついた二次情報だということ。ビジネスにおいて情報は生命線で、情報に振り回されないためには、どうやって情報の質と精度を高めるか。そのための努力と工夫を惜しんではいけないということ。
・人間にとって一番大事なのは、「自分は何も知らない」と自覚すること。
・情報は「考える」作業を経ないと、知識にならない。考えることによって、様々な情報が有機的に結合し、知識になるということ。
・考える力がある人は、その人なりの価値観を軸として持っている。
・仕事の仕方でも人生においても、正解があるわけではない。自分で言いと思うものをその都度、探して行動していくしかない。
・何か問題が起きると、その問題を必要以上に大きくとらえる人がいて、問題はあってはならないもの、という気持ちが強すぎる。しかし、人間は生きていれば問題だらけ。一つ問題がなくなれば、すぐに次の問題が起こる。懸命に生きることが、懸命に問題を生み続ける。人生というものは、問題があって当たり前。問題のない人生など、どこにもない。問題がなくなるのは、死ぬ時。
・困難な問題に直面した時に必要なのは、その状況を冷静に見つめながら、前向きに考える謙虚さで、過信や自己否定がそこにあってはいけない。そこから逃げることなく、正面から受け止めてベストを尽くせば、必ず知恵と力が湧いくるし、思わぬ閃きも生まれる。そうして不可能だと思っていたものに、光が見えてくる。
など、読書についての考え方だけではなく、人生の考え方なども盛り込まれていました。